4.問題と解決策
解決策は、人口を抑制するか、人が消費する資源の量を減らすしかない。前者について、グレッチェン・デイリーとエーリックのおおざっぱな試算(人類の持続可能な生存のために使用できる総エネルギーを年6TW(テラワット)と仮定すると、一人当たり年3kWのエネルギーを消費する場合、20億人が生存できることになる。)によると、地球が収容するのに適正な世界人口は20億人程度だという。20億人とは1930年の地球の総人口に等しい。この数字は、中国でおなじみの一人っ子政策を全世界で100年続ければ容易に達成できるという。
犬や猫のように人間を間引きしたり中絶することには、宗教上、倫理上の理由から受け入れられがたい現状では、避妊具の使用、パイプカットによる断種、または卵管結紮(けつさつ)などにより妊娠を防ぐことが現実的となる。しかしそれらの実行にさえ、多くの問題が存在する。人口問題の点からは、―多くの論者が問題視しているのに対し―、日本や先進国で進行する少子高齢化はむしろ望ましいといえる。にもかかわらず政府が移民を呼んでまで人口を維持しようとしているのは、労働力を維持し、経済成長し続けるためだ。
人口過剰に対処する際の問題の第一は、技術的楽観主義だ。これまでも人類はなんとか問題に対応してきたし、これからも一部の天才がなんとかしてくれるだろうから大丈夫だ、というものだ。この態度は根拠が薄く不合理としか言いようがないが、実際多くの人に見られる。正当な危機感を持つためには、無知から脱却し、現状の問題を正確に認識することが必要である。参考文献に挙げた『滅亡へのカウントダウン』を読む(タイトルだけでは、世界の終焉を煽るありがちな本かという印象を受けて終わってしまう)か否か、言い換えれば、本書の内容を知っているか知らないかで態度は変わる。
もう一つの問題は、国家間の合意形成が難しいことだ。国連のような場で話し合うと、途上国は先進国と同様の消費を要求し、アメリカのような先進国もこれまでのライフスタイルを変えることは嫌がる。どの国も持続的な経済成長の競争から降りたがらない。結果対策はいつも先送り、中身のないものになる。我々は運転手がブレーキをかけない暴走列車に乗っているようなものだ。
人類のエゴにより未然に人口過剰を軽減することができなければ、自然が代わりに人口を減らす。エコロジストはそれを未然に防ごうとしている。人間が人道的に人口を自制することに失敗すれば、自然が強引に調整するだけのことだ。人類の持続可能性を自力で達成するか、自然の乱暴な力に委ねるかのどちらが望ましいだろう。今生きている世代からすれば、前者なのは明らかではないか。
文責:THI002
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